= Seven's Voice特別篇 (2001.11.6) =


【 映画「蘇える金狼」完全版を見た! 】

2001.10.27 22:20〜10:28 07:05
〜 東京国際ファンタスティック映画祭[蘇える最も危険な男 松田優作十三回忌] より 〜

動く標的、撃ち落とせ!
気をつけろよ、刺すような毒気がなけりゃ、男稼業もおしまいさ

朝倉は優作だね!


<プロローグ>
 2001年6月X日。都内某所。
俺は初めてそのレストランに入った。食事の最中、ふと周りを見回すと何かが俺の記憶を呼び起こした。
「ここは!」


<東京ファンタ>

 2001年10月27日22時5分。俺は渋谷パンテオンにいた。
今夜はここで、
東京国際ファンタスティック映画祭[蘇える最も危険な男 松田優作13回忌]と題し、松田優作主演映画&TV作品が上映されるのだ。
上映作品は、
『探偵物語』から第5話「夜汽車で来たあいつ」、最終話「ダウンタウン・ブルース」と、『蘇える金狼』、そして『ブラック・レイン』だ。

 映画祭ということもあり、司会の進行でこのイベントが進められていく。この日のためだけに製作されたというオープニング映像。
「探偵物語」の後に観客席で見ていた美由紀夫人と龍平君の紹介。
トークショー1部は山根氏の司会で丸山氏や仙元氏、山西氏、そして急遽参加された石橋“甘木”凌氏が熱く語る。
トークショー2部はCDやゲーム関連。眠くなる。コミック原作者が大藪春彦氏について少し語った時に目が覚めた。
ゲーム映像や何本かの優作映画予告編の後、休憩をはさみ、時間は午前2時30分頃、ようやく「蘇える金狼」だ(後述)。
そして、休憩後、午前5時過ぎに「ブラック・レイン」上映。オープニング・テロップに “YUSAKU MATSUDA”と表示されたとき、
700人余の観客から拍手が起こったのが嬉しかった。映画が終わったのは午前7時を過ぎていた。

 映画「蘇える金狼」上映前、司会が「この『蘇える金狼』はニュープリント版です」と告げた。
映画「野獣死すべし」にしようかとも思ったが、ニュープリント版の金狼が角川にあったので金狼にしたというニュアンスのことを短く説明した。
ニュープリント版? 期待大だぜ! おっと場内が暗くなった。いよいよ映画「蘇える金狼」のスタートだ!


<映画「蘇える金狼」が蘇えった夜>

 「おッ!」
ちゃんと角川映画名物「火の鳥」のオープニングだ!(DVDではカットされた)
これでなくちゃネ。
 そして、・・・
「えッ?」
いきなり俺はオープニングの音に驚いた。
何と、いつもの「ビ〜〜ン、(小さく)ビ〜〜ン」じゃないぞ!
「び〜〜〜ん」だ。そうか、これが本当のオープニング音なんだ!(DVDは「ビ〜〜ン、ビ〜〜ン)」
今まで何度もこのオープニング音のダブりに疑問を持ってたんだ。それが解消されて嬉しくなった。今回、新たに修正したのか?

 タイトルバック。
さすが渋谷パンテオン。音がいい。音量も。真ん中の席だったのでちょうどいいバランスで聞こえる。
家の安物で聴くのと全然違う。
そして都内でもかなり大きなスクリーン。こんなスクリーンで上映されたのはかなり久しぶりだと思う。
白バイで走るシーンを見ながら、ロケ現場を求めてあの丸の内近辺を歩いた時のことを思い出した。
もちろん、ウッズマン3発で片付けるシーンも、DVD版のように銃火に着色はしていない。

 ここで、DVD版について記しておきたい。
俺はこのDVD版に不満を持っていた。
2000年に発売されたDVD版「蘇える金狼」は一言でいうと、「暗い」のだ。
デジタル画像処理とかで、肌の色まで暗く映っている。そして、おかしな色の補正がある。
例えば、カウンタックが走る時に映る信号の色が赤ではなくオレンジ。(映画では赤)
もっとも、ビデオ版にはなかった、京子のマンションを訪問する前に朝倉が車内でタバコの先に麻薬を付着させるシーン等があったり、
京子とのベッドシーンがくっきり映っているという点は嬉しいが・・・。

 ちょっと話がそれてしまった。
東和油脂で岩城滉一が食べているのはカツ丼か?
社長令嬢の絵理子も美しいぜ!
そして、このシーン。
「どこ行こってんだい、ここは通り抜け出来ねえんだよ!」 このチンピラ、声がいい。サンタナの看板もよく見える。
クラブ・ドミンゴではちゃんと万札を置いていく朝倉。
京子の腋毛もよく見えた。そして、
「あたし、こんな気持ちになったの初めてだわ、ずーっと一緒にいたいなぁ」
「俺もだ」
優作兄ィ、やってくれるぜ! 

「ゆっくりとだぞ〜」の磯川。南原氏は2時間前に上映された「探偵物語」最終回にも出てました。
まさにうってつけの役だ。

磯川邸での
「あんたんとこの部下は、なりばかりはでかくても銃に関しては全くのトオシローだねえ」
で始まる朝倉のセリフは最も大藪春彦原作ならではのシーンだ。
取引のシーンでは、第二海堡に上陸した数年前の夏の暑い日を思い出した。
あの予告篇にもあるトンネル逆さ撃ちが、カッコイイぜ!
         走るぜ!!

 それにしても、あのフラメンコ音楽のシーンから千葉ちゃんカーチェイスのシーンに行く場面転換の
何と素晴らしいことか。
石炭のボタ山で千葉ちゃんと一緒に由紀子(結城しのぶさんかな?)が落ちていくシーンを良く見ると、
あの細い腕から由紀子はスタントの吹替えではないことを知り、体当たりの演技に感動。


「ギャラ〜、高いよ〜」の秘密興信所の石井(故・岸田森氏)のエルボー障子破りも、
朝倉の第二弾を避けるために石井が本能的にやったという設定の演技にさえ見えてしまった。

シーンは葉山の社長の別荘へ向かう途中へ。
「銃ってのはな、セーフテーレバー外さなきゃ弾出ないんだよ!」
「許して〜〜〜、あ、が〜」 (金子)
優作朝倉にとっては「セーフテー」なのだ。

そして、社長別荘での東和油脂社長&重役陣VS朝倉のシーン。
草薙さんがタバコを逆にくわえ、火をつけ、しかも吸ってしまうという、金狼フリークには伝説の隠れた名場面が
パンテオンの大画面ではよく見えた。
「金子がね〜」の成田さんや「うそだ〜」の小池さんは悲しいことにもう亡くなられていますが、
その名演技はこの映画に焼き付けられ、今後も語られ続けていくことだろう。


<ラストシーンの謎>

朝倉が京子に刺されてしまうというラストシーンは、大藪ファンの俺にとって、何度見てもそれはあってはならないことだ。
俺の気持ちは、この一点だけは初めて見た時から変わらない。
今でもたまに新刊書店の映画コーナーで見かける『関根勤のサブミッション映画館』という本で関根さんが書いていることと
全く同じ気持ちだ。
映画は別モノ。だが、それでも、タラップで狼のように微笑む朝倉を見たかった。


そして、死んだ京子を地下に落とした朝倉が、
胸ポケットから取り出した赤い航空チケットの1枚を地下に放り投げる絶妙のタイミングで、
♪「蘇える金狼のテーマ」(by 前野曜子)が流れる。
ここも今までのビデオ版やDVD版では始まりの音がダブっていたのだが、この上映では直っていた。
オープニングとエンディングのこの補正(?)がとても嬉しかった。
以上を踏まえ、俺は今回のニュープリント版を「蘇える金狼・完全版」と呼びたい。
今後も全国の劇場でこの「蘇える金狼」を上映してほしいと強く願う。


そして、本当のラスト。
2001年物のジュヴレ・シャンヴェルタンのシーン。フランスではもう2001年物の収穫も終わったことだろう。
DVDではわからなかったが、朝倉の目の周りがかなり青くしてあった。

「ねぇ、ジュピターには何時につくの?木星には何時につくんだよ、木星には何時につくんだ・・・」

画面が白くなり、 2つの面(ジュピターの象徴との説もある)と共に「終」マーク。

・・・どこからともなく拍手の嵐。


<エピローグ>
2001年11月X日 午後10時。都内某所。
俺は再びそのレストランにいた。俺は映画「蘇える金狼」を東京ファンタで見てあることに確信していた。
それは、ラスト近く。朝倉が鈴本に決断を迫られたあのシーン。

「あんたの200万株、売ってくれんか?時価の3倍で買おう。24億。大金だ。しかし金はどうとでもなる。
わしのバックには次期総裁を狙う、通産大臣の吉村がいる。
われわれを敵にまわしてあがくか、それとも、これをしおどきにして金儲けをするか、返事は?」
(鈴本)

「あわてるな! 一杯もらおうか・・・ 24億、ドルの高額紙幣で用意してもらおう」(朝倉)

・・・このシーンだ。

この舞台となった高級そうなレストラン。独特な石造りの内装。DVDやビデオでは、窓の外は白く、何も見えない。
だが、先の上映で俺ははっきりと見た。窓の外。はるか下にみえるビルの群れ。
そこは高層ビルにあるのだ。
そして、大スクリーンにはっきりと読み取れた窓際の文字「OSLO」。

そう、そのレストランは偶然にも数ヶ月前に入ったレストラン。ここだ!
ここまでこの独断と思い込みに満ちた文章を読んでくれたお礼にお教えしよう。

ここは、渋谷クロスタワー31Fにある、「スカイレストラン オスロ」。
1975年のオープン。内装も当時とあまり変わっていないようだ。
夜景がきれい。昼のランチ・バイキングもオススメ。⇒  


朝倉VS鈴本。
朝倉はあの重大な決断まで、わずか38秒であった。
できる男は決断が早い。
21世紀。野望もなく、人の目を見て会話できない者たちが増えている今こそ、
この朝倉の野望への挑戦に学びたい。

映画「蘇える金狼」よ、永遠なれ!!



(注)一部、敬称を略させていただきました。




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